賃貸仲介システムの移行では、データの移し替えに加え、現場が日々の仕事を進められる状態まで準備します。切り替える業務、入力ルール、練習方法、相談先を決め、稼働後は対応漏れや手戻りを確認しながら運用を見直しましょう。
新しいシステムに変えたいものの、「忙しい営業担当者が入力を続けられるか」「結局、元のExcelに戻らないか」と不安がある。そんなときは、候補システムで反響の受付から対応記録、次回連絡、担当者不在時の引き継ぎまでを試してください。
確認したいのは、普段の担当者が仕事を進められ、困ったときに解決できるかです。操作説明を受けるだけで終わらせず、移行前の準備と稼働後の見直しを一続きで考えます。
「現場が使いこなせるか」という不安を、そのまま研修の課題にすると対策が曖昧になります。まず、何を確かめたいのかを分けてください。
顧客を探す、対応履歴を残す、内見予定を変えるといった作業を、日常の担当者に試してもらいます。どの画面や言葉で迷ったかを記録してください。
追客中の顧客の希望条件、担当者、次回連絡日などを旧データと照合します。件数が合っていても、接客に必要な内容が欠けていないかを見ます。
いつ入力するか、誰が未対応を確認するか、旧システムをいつまで更新するかを決めます。操作できる人がいても、役割が曖昧なら運用の確認が必要です。
たとえば「顧客情報を見つけられない」場合も、検索方法が分からないのか、移行対象から漏れているのかで対応が変わります。操作の問題なら練習や手順書、データの問題なら移行結果の調査というように、困っている作業から確認先を決めましょう。
最初に使う範囲は、「顧客管理機能」のような機能名だけで決めず、「反響を受け、担当を決め、対応内容と次回連絡日を残す」といった仕事の流れで区切ります。物件情報やメールとの連携が必要なら、その接続部分も確認対象に含めてください。
試すメンバーには、操作に詳しい人に加え、普段その業務を担う営業担当者や事務担当者を入れます。「入力が終わった」だけでなく、店長が未対応を見つけられるか、別の担当者が経緯を読めるかまで確かめます。
複数店舗での試行では、店舗間で顧客を紹介する場面や本部への報告も確認します。店舗内だけで完了する操作と、ほかの部署へ情報を渡す操作を分けておくと、展開前に確かめる範囲が明確になります。
移行対象は、追客中の顧客、来店・内見予定がある顧客、申込手続き中の案件、過去の参照用記録などに分けます。現在の接客に必要な情報から確認し、移さない履歴や添付資料は、保管場所と参照方法を決めてください。
照合項目には、顧客数や物件数に加え、顧客と対応履歴のひも付け、担当者、希望条件、予定、申込状況などを入れます。同じ項目名でも、新旧システムで意味や選択肢が違う場合を想定し、対応表を作ってベンダーと確認しましょう。
もう一つ決めたいのが、試験移行のあとに追加・変更された情報を、いつ、誰が反映するかです。切り替え直前までに入った反響や内見予定の変更について、最終取り込みの対象期間と照合担当を決めます。重複登録や、すでに返信した顧客への再送も確認項目です。
並行運用を行うなら、対象業務、期間、照合担当、終了条件を決めます。「慣れるまで両方に入力する」だけでは、終了を判断できません。業務ごとにどちらを最新情報の管理先とするかを明示してください。
切り替えの判断条件には、代表業務を完了できること、必要データの照合が終わっていること、権限と連携を確認できていること、未解決の不具合に対応方針があることを入れます。満たせない場合に、開始を延期するのか、対象業務を絞るのかを決める責任者も必要です。
あわせて、旧システムを参照できる期限、データの出力方法、障害時の受付方法を確認します。旧側へ戻す可能性があるなら、新側で受け付けた顧客や対応履歴をどう引き継ぐかまでベンダーと決めましょう。切り替え後に増えた記録も、復帰手順の対象にします。
研修では、画面の説明を聞いたあとに、本人が操作する時間を取ります。営業担当者は顧客への対応、事務担当者は登録内容の確認や修正、店長は未対応の確認と担当変更というように、役割ごとに練習する課題を変えてください。
たとえば練習用の案件で、反響の受付、希望条件の登録、物件提案の記録、内見日時の変更まで進めます。その後、元の担当者が不在になった想定で別の人が履歴を読み、次にする対応を説明します。操作ができたかと、記録が引き継ぎに使えたかを一緒に確認する練習です。
練習は、外部へのメール送信や物件掲載が発生しない環境・設定で行い、練習用データを使います。案内役が代わりに操作した箇所は、本人がもう一度試す対象として残しましょう。
社内向けの手順書は、実習で迷った作業から作ります。「内見日程を変更する」「重複した顧客を見つけたときに確認する」「担当者不在時に対応する」など、仕事の名前で探せる形にします。
各手順には、開く画面、必要な入力、完了後に確認する状態を載せます。自分で処理してよい範囲と、管理者へ確認する範囲も分けてください。特に顧客の統合や削除などは、操作の説明だけでなく社内の承認ルールも添えます。
相談を受ける担当者には、通常業務と別に、質問への回答やベンダーへの確認に使う時間を割り当てます。担当者が休む日の代行者と、社内で判断できない問題をベンダーへ渡す窓口も決めましょう。
営業担当者の練習時間も業務予定に入れ、その間の反響や来店を誰が受け持つか調整します。研修への参加記録に加え、担当業務を一人で完了できたかを確認して、追加の練習が必要な人と作業を把握してください。
稼働後の質問は、社内の決めた窓口へ集めます。記録するのは、発生した業務、期待していた結果、実際に起きたこと、顧客対応への影響です。誰が調べるか、いつまでに回答するか、解決までどう処理するかも記入します。
接客を止める問題と、あとで確認できる操作の質問を分け、優先順位を付けてください。連携エラーなどで代替手順を使った場合は、その間に受け付けた情報を新システムへ反映したかまで確認します。
回答は質問した本人へ伝えたうえで、同じ仕事をする人にも共有します。手順が変わったときは手順書も更新し、口頭の回答と記載内容をそろえます。
入力が進まないときは、どこで手が止まったかを本人と一緒に見ます。画面を探せないなら手順の確認、必要な顧客を開けないならデータや権限の確認というように、原因ごとに対応を分けます。
操作を理解した人でも同じ情報を何度も入力しているなら、設定や連携、社内ルールを点検する対象です。現場に入力を求める前に、その項目を誰が何に使うのか、別の工程の記録を再利用できないかを確認してください。
すでに稼働している会社も、使われていない機能を一度に広げず、止まっている業務を一つ選び、設定や手順を修正して試し直すところから着手できます。
毎日ログインしていても、次回連絡の予定や対応履歴が残っているとは限りません。定着を確認するときは、対象業務が新しい手順で完了し、必要な情報をほかの人も使えるかを見ます。
J-Net21のCRM導入に関する解説でも、データを活用した施策の計画・実行・効果測定・改善を繰り返すことが案内されています。導入して終わりにせず、自社で見直す項目を決めておきましょう。
※参照元URL:J-Net21(中小企業基盤整備機構)(https://j-net21.smrj.go.jp/solution/qa/systems/Q1486.html)
次の表は、賃貸仲介で確認する指標の例です。業界共通の合格基準ではなく、自社の業務と導入目的に合わせて対象や目標を決めてください。
| 確認すること | 数え方・確かめ方の例 | 問題が残る場合の確認先 |
|---|---|---|
| 反響の担当漏れ | 対象期間に受けた反響のうち、社内で決めた割り振り期限を過ぎても担当者が未設定の件数・割合 | 取り込み、割り振り設定、確認担当 |
| 次回対応の記録漏れ | 追客対象の顧客のうち、次回の対応内容・予定日が未設定の件数・割合 | 入力項目、記録するタイミング、運用ルール |
| 修正や二重入力 | 対象業務の処理件数に対し、入力修正や別ツールへの同じ情報の再入力が必要だった件数 | 移行データ、項目の対応、連携範囲 |
| 代理対応の可否 | 担当者不在時に、共有記録で次の対応を判断できたかを案件ごとに確認 | 履歴の内容、閲覧権限、引き継ぎ手順 |
導入前後で比べる際は、対象業務、集計期間、数え方をそろえます。反響数が違う時期は件数だけで判断せず、受けた反響全体に対する割合も見てください。操作時間を測る場合は、同じ作業の1件当たりで比べます。
対象店舗や機能を広げる前に、残っている問題と顧客対応への影響を確認します。対応漏れや修正が増えているなら、設定や手順を直して同じ業務を再確認し、次の展開を判断しましょう。
候補システムを比較するときは、自社が必要とする作業を挙げ、どこまで支援を受けられるかをベンダーへ確認します。「導入支援あり」という説明だけで、データの整理から社内ルール作成まで任せられると判断しないようにしましょう。
| 場面 | 確認する支援内容 | 自社で決める・準備すること |
|---|---|---|
| データ移行・初期設定 | 取り込める情報、データ整備の分担、試験移行、結果照合の支援 | 移す情報、項目の意味、照合担当、切り替えの承認者 |
| 操作研修 | 実施方法、対象者、回数、追加研修、練習環境や教材 | 役割別の練習課題、受講時間、欠席者のフォロー |
| 稼働直後の問い合わせ | 受付時間、連絡手段、緊急時の窓口、回答までの目安、支援期間 | 質問の集約担当、影響の確認、回答の社内共有 |
| 運用の見直し | 設定変更や活用相談の対応範囲、担当者の関与、追加費用の条件 | 見直す指標、現場の課題、社内ルールの決定者 |
見積もりでは、基本契約に含む作業と、別料金になる作業を確認します。支援の期間や回数に上限があるか、稼働後も同じ担当者へ相談できるかなど、自社の教育体制で不足する部分を具体的に聞いてください。
デモではベンダーの説明に加えて、自社の担当者が代表業務を操作する時間も設けます。機能、日々の使いやすさ、必要な支援を合わせて比較しましょう。
賃貸仲介システムを移行するときは、切り替える業務、データの確認方法、役割別の練習、稼働後の相談先を一緒に準備します。旧システムへの入力を止める条件と、問題が残ったときの判断担当も決めておきましょう。
反響を受けてから対応を引き継ぐまでを候補システムで操作し、迷った箇所、足りない情報、ベンダーに確認したい支援を記録してください。その結果を使って、切り替え前に解消する課題と、稼働後に見直す項目を決めます。
画像引用元:グラングコア公式HP
(https://grung.co.jp/)>
仲介業務のフローと連動。アポ情報の共有で反響対応の精度を高め、来店率が13%向上※1した実例あり。
ボタン一つで物件周辺情報を自動取得、写真もAIが選定。間取り作成や登録を1件につき約7分※2で完了。
業者間流通サイト(BBサイト)の物件情報を自動取込・更新でき、手入力の手間を削減。最新物件をタイムラグなく社内へ反映できる。
画像引用元:いい生活賃貸クラウド公式HP
(https://www.es-service.net/)>
入居者対応とバックオフィス業務を同一のクラウド上で提供。複数ツールにまたがらず処理ができる。
入居者アプリから修理や整備要請を受けられ、電話対応にかかる時間を1/3~1/4※3に削減した例も。
オーナーマイページ機能で、収支状況や物件情報をオンラインでいつでも共有可能※4。書類作成のコスト削減と、オーナーとの信頼関係構築を両立できる。
画像引用元:ビルジム公式HP
(https://www.biljim.daishi-software.co.jp/index.html)>
隔月・3か月毎など変則的な請求を複数設定可。検針値の取込・集計も自動、不定期請求のミスを防止。
クラウド上で情報を一括管理。異なる物件に入居する同一テナントの状況などもスムーズに共有できる。
契約更新・解約処理に加え、契約開始前・解約後・一時利用などスポット請求にも柔軟に対応※4。テナント事業特有のイレギュラー業務を取りこぼさない。
※1 実績より。参照元:グラングコア公式HP(https://grung.co.jp/cases/roomselect/)
※2 機能紹介より。参照元:グラングコア公式HP(https://grung.co.jp/function/property_management/)
※3 実績より。参照元:いい生活賃貸クラウド公式HP(https://www.es-service.net/service/es-home/)