「問い合わせは来ているのに、来店につながらない」。賃貸仲介の店舗運営で、この壁にぶつかっている店長や営業リーダーは多いはずです。広告費をかけて反響を増やしても、来店に結びつかなければ売上は伸びません。
来店率を上げる近道は、意外と地味です。まず自店の数字を正しく測り、どこで顧客が離れているのかを突き止め、その原因を仕組みで解消していく。この順番を踏まないと、トークを磨いても担当者ごとに成果がばらつき、数字は安定しません。
この記事では、来店率の正しい測り方から、伸び悩む原因の見つけ方、今日から実践できる具体策、そして店舗全体で数字を安定させる仕組みづくりまでを順に解説します。
来店率の改善は、言葉の定義をそろえるところから始まります。ここが曖昧なままだと、施策を打っても効果を測れません。
賃貸仲介でいう来店率は、一般に「反響来店率」を指し、次の式で表されます。
分子は問い合わせから実際に来店に至った件数、分母は問い合わせ(反響)の総数です。式そのものはシンプル。つまずきやすいのは、分母である「反響数」の取り方のほうです。
不動産情報サイト事業者連絡協議会などの資料や複数の解説が指摘するとおり、「反響」として何を数えるかは会社によってばらばらです。メールの問い合わせだけを反響とする会社もあれば、電話・LINE相談・来店予約・会員登録まで含める会社もあります。分母の取り方が違えば、同じ「来店率40%」でも中身はまったくの別物。
だからこそ、自店で「何を反響と数えるか」を先に決めておくことが出発点になります。この定義が定まっていないと、他店との比較はもちろん、自店の月次比較すら意味を持ちません。
反響は大きくメール反響と電話反響に分かれます。この2つは、来店率の水準がまるで違います。
電話は、その場で会話が成立し、条件のヒアリングから来店の約束までを一気に進めやすいチャネルです。対してメールは、送っても返信がない、他社に先を越される、といった離脱が起きやすく、来店に至る割合は電話より低くなりがちです。
つまり、店舗全体の来店率だけを眺めていても、実態はつかめません。メール反響と電話反響を分けて数字を出す。そこで初めて「どちらの対応に穴があるのか」が見えてきます。
まずは直近1か月で、反響数と来店数を、メール・電話それぞれで拾ってみてください。たとえばメール反響が100件で来店が30件なら、メール反響来店率は30%。電話反響が50件で来店が35件なら、電話反響来店率は70%です。これを2〜3か月分並べると、自店の平常水準と、季節や施策による変動が見えてきます。
数字を出すこと自体が、実は最初のハードルです。反響と来店を手元の記録から正確に拾えないなら、その時点で「記録の仕組み」に課題があるということ。この点は後半で改めて触れます。
自店の数字が出たら、次に気になるのは「これは高いのか低いのか」でしょう。ただ、ここは慎重に扱う必要があります。
参考になる数値として、船井総合研究所は繁忙期の業界平均を挙げています。同社がコンサルティング支援先で目標に置く数値とあわせると、次の通りです。
| 反響種別 | 繁忙期の業界平均 | 支援先の目標 |
|---|---|---|
| メール反響 | 20〜30% | 40% |
| 電話反響 | 60〜70% | 80% |
| 総反響 | 40〜50% | 60% |
参照元:公益社団法人 全日本不動産協会「電話・メール接客のポイントを押さえて来店率を上げる」https://www.zennichi.or.jp/law_faq/電話・メール接客のポイントを押さえて来店率を上げる/
電話とメールで倍以上の開きがある。この数字が示すのはそこです。裏を返せば、来店率の低いメール反響には、対応次第で伸ばせる余地が大きく残っているということでもあります。
ここで大切なのは、この数字を「絶対的な平均」として鵜呑みにしないことです。
そもそも賃貸仲介の来店率に、公的な全国平均は存在しません。ある解説は基準値を30%とする見方を紹介していますが、その記事自身が「前提条件が違いすぎて正確な平均を算出するのは難しい」と断っています。Web集客の文脈では来店・商談率を20〜25%とする参考値もあり、数値は情報源によってばらつきます。
来店率は、反響の定義、チャネル構成、繁忙期か閑散期か、エリアや家賃帯によって大きく動くものです。家賃が安い物件ほど来店率は高く、高くなるほど検討事項が増えて下がる傾向がある、という指摘もあります。
だとすれば、他社の平均値と自店を見比べて一喜一憂するより、定義をそろえた自店の数字を継続して追い、その推移で良し悪しを判断するほうが、はるかに実務的です。目安の数値は「桁が大きくずれていないかを確かめる物差し」くらいに使うのがちょうどいいでしょう。
来店率が落ちたとき、多くの店舗はまず営業スタッフのトークやスキルを疑います。ロープレをやり直したり、成績の伸びないスタッフに発破をかけたり。あるいは、来店の減少を広告費の追加でカバーしようとする。けれど、原因はもっと手前に潜んでいることが少なくありません。
来店までの流れは、反響 → 初回接触(返信・架電) → 来店、という段階に分解できます。成約まで含めれば、成約数は「アクセス数 × 反響率 × 来店率 × 成約率」という掛け算。この分解が効くのは、「どの要素がボトルネックか」を切り分けられるからです。
反響は取れているのに来店率が低いなら、問題は反響の集め方ではなく、反響を受けてからの初回接触にあります。逆に、初回接触はできているのに来店に至らないなら、返信の内容や追客のやり方が課題。段階を分けずに「来店率が低い」とだけ捉えると、打ち手がぼやけてしまいます。
自店がどの段階で顧客を取りこぼしているのか。それを特定することが、原因究明の第一歩です。
来店率の低さを個人の営業力の問題で片づけると、改善は続きません。理由は2つあります。
ひとつは、できるスタッフが辞めれば成果も一緒に消えてしまうこと。もうひとつは、その人のやり方が言語化・共有されないまま、店舗としては同じ問題を繰り返してしまうこと。
船井総合研究所も、電話反響対応は個々の営業マンの実力に頼るのではなく、トークスクリプトを整えて誰でも一定の品質で対応できるようにすることで、店舗全体の来店率が安定すると指摘しています。原因を「人」ではなく「仕組み」で捉え直す。そうすると、改善が定着しやすくなります。
段階を分けて見ていくと、来店率が伸びない店舗には共通のつまずきが浮かんできます。
いずれも、個人の頑張りより、店舗の運用の作り方で決まる部分が大きい課題です。
原因の当たりがついたら、まずは初回接触の質を上げるところから着手します。仕組みづくりには時間がかかりますが、初期対応の改善なら今日からでも始められます。
最初の5分・10分を意識し、一次返信を早めます。
開かれる件名と、返信しやすい内容・回数を整えます。
希望条件を聞き、来店後に得られる提案を具体化します。
メール・電話を補い、最初の接点と追客を切らさないようにします。
来店率を左右する最大の要素のひとつが、反響への初動の速さです。
顧客が満足した点を尋ねたRSC(不動産情報サイト事業者連絡協議会)の利用者アンケートでは、「問い合わせに対するレスポンスが早かった」ことが満足度の第1位に挙がっています。返信の速さは、顧客体験の入り口そのもの。
具体的な目安もあります。LIFULLが会員向けに実施したアンケートでは、「5分以内(システムによる自動返信を含む)」の返信が、「3時間以内」の返信より来店率・成約率で上回ったという結果が出ています。来店率の高い会社の反響対応は6分以内、という分析も。船井総合研究所は、反響を1日放置すると他社に先行され、来店率はおよそ10%下がると指摘しています。
これらは母数や条件が公開されていない調査も含むので、数字そのものを絶対視する必要はありません。ただ、複数の情報源が「初動は速いほどよい」で一致している点は見逃せない。最初の数分で差がつく、という前提で対応体制を組む価値は十分にあります。
メール反響の来店率は、スピード・内容・回数の3つに分けて考えるとわかりやすくなります。この順番で穴を埋めていきます。
スピードは前述のとおり。次に内容ですが、送ったメールがそもそも開かれていない可能性を疑うところから始めます。差出人名は「社名」または「社名+担当者名」にして、誰からのメールか一目でわかるように。件名には、顧客の記憶に残っている情報――問い合わせた物件の特徴や、利用したポータルサイト名――を盛り込むと開封されやすくなります。
自動返信を使うなら、最初の数文が機械的な定型文に見えないよう気をつけてください。人が対応している雰囲気が伝わるほうが、顧客の反応はよくなります。
電話反響は、その場で来店の約束まで進められる貴重な機会です。
下準備として、問い合わせが集中しやすい物件は日々把握しておきます。人気物件は重なりやすく、問い合わせを受けたときにはすでに満室、ということが起こりがちだからです。そこで「その物件は終わりました」と電話を切ってしまうか、「実は今日、条件の近い物件が出ました」と次につなげられるか。この差が、来店率を左右します。
会話のなかで希望条件を丁寧にヒアリングし、来店すれば具体的な提案が受けられると感じてもらう。それが来店の約束につながります。
近年は、メールや電話に加えてLINEやSMSを併用する店舗が増えています。
LINEはメールに比べて開封されやすく、既読も確認できるため、連絡が届いているかどうかを把握しやすい利点があります。気軽にやり取りできるぶん、返信のハードルも下がる。LINEで問い合わせ対応を行う会社の来店率は、メール対応より高くなる傾向がある、という指摘もあります。SMSは、メールアドレスを聞けず電話番号しかわからない相手にも届くため、初動の一次接触を切らさない手段として使えます。
一方で、LINEが万能なわけではありません。契約や費用など正確性が求められる内容、情報量の多い提案は、読み飛ばされにくいメールのほうが向いています。個人のLINE IDを教えることに抵抗を感じる顧客が一定数いることも、調査で示されています。
現実的には、初動のスピードと気軽さでLINEやSMSを活かし、正確に伝えるべき場面はメールを使う。この使い分けが有効です。どのチャネルを主に使うかは、顧客層や自店の運用に合わせて選べば十分でしょう。
個人の初期対応を磨けば、来店率は上向きます。ただ、それだけでは担当者やその日の忙しさで成果がぶれる。数字を安定させる次の一手が、仕組み化です。
初動の遅れや追客の途切れは、「気をつける」だけでは何度でも繰り返されます。接客や内見で現場が動いているあいだに新しい反響が届けば、対応が後回しになるのは避けられません。
だからこそ、誰がどの反響にいつ対応し、次にいつ追客するかを、個人の記憶ではなく記録として残す運用に切り替えます。対応の期限やタスクが目に見える形になっていれば、担当者が接客中でも、別のスタッフが代わりに一次対応できる。属人化を解消するとは、この「個人の頭の中」を「店舗の共有情報」に移すことにほかなりません。
反響と対応の記録が溜まってくると、それは分析の材料に変わります。
たとえば、どのポータルサイトからの反響が来店につながりやすいかがわかれば、広告予算をそちらに寄せる判断ができます。来店率の高いスタッフの対応履歴を見れば、返信のタイミングや文面といった「勝ちパターン」を言語化し、店舗全体で共有できる。
手作業のエクセル管理でも記録はできますが、件数が増えると入力ミスや抜けが生じ、正確なデータが積み上がりにくくなります。反響の記録・分析を続ける前提に立つなら、顧客情報や対応履歴を一元管理できる仕組みを整えておくと、分析の精度と手間の両面で楽になります。
最後に欠かせないのが、目標値を決めて定期的に振り返る運用です。
明確な「ものさし」がないと、仕事は何となくの感覚で進み、改善点も見えなくなります。メール反響の来店率はどこまで目指すのか、電話反響ではどうか。目標を数字で置き、実績との差がどこから生まれているのかを、初動スピード・追客頻度・返信内容といった要素に分けて振り返る。
来店率が目標に届いていないなら、どこかの要素が足りていない。そう考えれば対策を立てやすくなります。測って、原因を絞って、仕組みに落とす。この振り返りのサイクルを回し続けることが、来店率を一時的な改善で終わらせないための鍵です。
賃貸仲介には繁忙期と閑散期があり、来店率も季節で動きます。閑散期に数字が落ちること自体は、珍しくありません。
閑散期は引っ越し需要そのものが減るため、反響の数も質も繁忙期とは変わります。反響率は繁忙期と閑散期で2倍以上の差がつくこともある、と言われます。
注意したいのは、来店率の分母である反響の性質が変わっている以上、繁忙期と同じ数字を単純に比べても意味が薄いということ。閑散期に来店率が下がったからといって、対応の質が落ちたとは限りません。季節要因を織り込んだうえで、前年の同じ時期と比べる。そういう読み方が現実的です。
反響が減る時期は、裏を返せば一件あたりにかけられる時間が増える時期でもあります。繁忙期には手が回らなかった追客の見直し、トークスクリプトや返信テンプレートの整備、過去に来店に至らなかった顧客の掘り起こし。仕組みを整える作業に、この時期は向いています。
閑散期に土台を固めておけば、反響が一気に増える繁忙期に、その仕組みがそのまま効いてきます。
賃貸仲介の来店率を上げる道筋は、突き詰めるとシンプルです。
まず、反響の定義をそろえて自店の来店率を正しく測る。次に、反響・初回接触・来店のどの段階で落ちているのかを切り分け、原因を絞り込む。そして、初動の遅れ・追客の途切れ・情報の属人化といったボトルネックを、個人の頑張りではなく店舗の仕組みで解消していく。
初動スピードやメール・電話の対応といった個人の初期対応は、今日からでも変えられます。その効果を安定させ、店舗全体の数字に変えていくのが、記録・分析・目標管理の仕組みづくりです。他社の平均値と見比べて一喜一憂するより、自店の数字を継続して追い、その推移で判断する。この積み重ねが、来店率を着実に押し上げていきます。
メール・電話それぞれの反響数と来店数を出し、2〜3か月分を並べてください。数字を拾えない項目があれば、そこが記録の仕組みを見直す最初のポイントです。
画像引用元:グラングコア公式HP
(https://grung.co.jp/)>
仲介業務のフローと連動。アポ情報の共有で反響対応の精度を高め、来店率が13%向上※1した実例あり。
ボタン一つで物件周辺情報を自動取得、写真もAIが選定。間取り作成や登録を1件につき約7分※2で完了。
業者間流通サイト(BBサイト)の物件情報を自動取込・更新でき、手入力の手間を削減。最新物件をタイムラグなく社内へ反映できる。
画像引用元:いい生活賃貸クラウド公式HP
(https://www.es-service.net/)>
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入居者アプリから修理や整備要請を受けられ、電話対応にかかる時間を1/3~1/4※3に削減した例も。
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画像引用元:ビルジム公式HP
(https://www.biljim.daishi-software.co.jp/index.html)>
隔月・3か月毎など変則的な請求を複数設定可。検針値の取込・集計も自動、不定期請求のミスを防止。
クラウド上で情報を一括管理。異なる物件に入居する同一テナントの状況などもスムーズに共有できる。
契約更新・解約処理に加え、契約開始前・解約後・一時利用などスポット請求にも柔軟に対応※4。テナント事業特有のイレギュラー業務を取りこぼさない。
※1 実績より。参照元:グラングコア公式HP(https://grung.co.jp/cases/roomselect/)
※2 機能紹介より。参照元:グラングコア公式HP(https://grung.co.jp/function/property_management/)
※3 実績より。参照元:いい生活賃貸クラウド公式HP(https://www.es-service.net/service/es-home/)